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荏原中延・隣町珈琲が文芸誌「mal"」創刊 コンセプトは「悪い兄たち」

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「mal"」編集委員の森慶彦さん(左)と店長の栗田佳幸さん

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 荏原中延の喫茶店「隣町珈琲(カフェ)」(品川区中延2、TEL 03-6451-3943)が3月25日、地域文芸誌「mal"(マル)」を創刊した。主宰は同店店主の文筆家・平川克美さん。

「隣町珈琲」から創刊される文芸誌「mal”」(1,400円)

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 媒体名の「mal"」はフランス語で「悪(わる)」を意味し、平川さんと思想家・内田樹さんの共著にある一節「悪い兄たち」に由来する。同店店長の栗田佳幸さんは「社会に出た後、一線を超えない倫理観を持ち続けながら生活していくには、ロールモデルが必要。誰かにとって、この本がそんな存在になれば」と説明する。

 同店で開催する文化イベントの一つの形として、2019年6月ごろ企画を開始した。編集委員は、同店で開催する文章講座「言葉が鍛えられる教室」の参加者・森慶彦さんほか来店客や栗田さんら5人。メンバー全員に編集経験がなく、試行錯誤の末に完成したという。

 インタビューや小説、エッセーなど32編を収録する。執筆陣は、地域や同店にゆかりのある作家、学者、文化人など29人。表紙の同店外観は、撮影写真をもとにデザインし、本業がアニメーターである森さんが彩色した。サイズはA5版で、ページ数は256ページ。販売部数は2000部。価格は1,400円。

 創刊号の巻頭特集は、大森出身で元旋盤工の作家・小関智弘さんへのインタビューを掲載する。制御盤設計会社ワコーシステムコントロール(荏原1)社長・鈴木是和さんは、小説「帰り船」を寄稿した。鈴木さんは70歳を過ぎてから執筆を始め、同店の文章講座に参加したことがきっかけになったという。そのほか、ミュージシャンの故・大瀧詠一さんがライブカフェ「AGAIN(アゲイン)」(小山3)を訪れた様子を収録したインターネットコンテンツ「ラジオデイズ」の書き起こしも。

 「初めて店を訪れた当時は荏原中延の読み方も知らなかったが、こうして本を作ることができ、感無量」と森さん。「このエリアに関係がない人にも、それぞれ地元がある。そこでの『文化の贈与』を考える意味で、全国の皆さんに読んでもらえたら」とほほ笑む。

 栗田さんは「店という物理的な場に人が集まって生まれた本。店頭やSNSでの反応を通して読者の声をぜひ聞きたい」と話す。今後は2号の制作も考えているという。

 店頭やオンラインショップ「隣町書店」のほか、販売希望のあった全国70店以上の書店や雑貨店などで購入できる。販売店の一覧は同店ウェブサイトに掲載している。

 同店の営業時間は10時~18時。月曜定休。

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