品川駅港南口エリアで6月30日、リヤカーで本の販売を行う「リヤカーブックス」が「品川経済書店」として営業を開始した。経営は、品川経済新聞を運営するノオト(品川区上大崎2)。
新規事業としてリヤカー行商事業をスタートさせた同社。「前々から、地元品川で地域貢献も含めた商売ができないか考えていた」と社長の宮脇淳さん。1月に初の自著となる「思いどおりに働く!-20代の新世代型仕事スタイル」(NTT出版)を出版し、あいさつ回りで訪れたさまざまな書店が新規事業のきっかけとなった。
宮脇さんは「出版不況の一因が『若者の本離れ』であるなら、来ない客を店で待っていても仕方ない。品川駅港南口は、多くのビジネスパーソンが行き交う街だが、ビジネス書を購入できる大型書店が少ないこともあり、顧客がいる場所へ出向くスタイル=『リヤカー』での販売に行き着いた。書店から足が遠のいたお客さまのニーズを知る最前線基地にしていきたい」と話す。
リヤカーの引き手は、26歳の木村貴則店長。かつて証券会社に勤めていたこともあり、ビジネス書には興味を持っていたという。「初めは戸惑いもあったが、リサーチを進めるうちに品川で働くビジネスマンやOLの多忙な様子に驚いた。良いビジネス書には、さまざまな気付きがあり、読んだ人の血となり肉となる。『リヤカーブックス』を通じて、品川で働く皆さま、特に女性を笑顔にしたい」と意気込む。
品川経済書店のターゲットは品川駅~大崎駅に乗降するビジネスパーソン。宮脇さんと木村店長が「面白い、ためになる」と思ったビジネス書を20~30種類セレクトする。
初回の仕入れ先出版社は、ダイヤモンド社、東洋経済新報社、小学館、ディスカヴァー・トゥエンティワン、筑摩書房ほか十数社。本屋を開業する場合、通常は「取次」と呼ばれる流通業者に商品の仕入れを委託するが、同業態では出版社に直取引を持ちかけた。門前払いされたこともあったが、ほとんどの版元が仕入れを快諾してくれたという。
書籍の品ぞろえは定期的にテーマを決め、特集の棚をつくる形で販売する。初回のテーマは「働き方を考える」。同店ではさらに、客寄せアイテムとしてiPadを用意し、無料で「おさわり」できるサービスも行う。オープン後間もなく足を止めた男性は「ビジネス書はよく読むので興味がある。面白い試み」と感想を述べた。
今後について、木村店長は「広告的な価値を高め、ネーミングライツで書店名を販売していく予定。品ぞろえが20~30種なので実売だけでは成り立たない。移動する広告塔として、新刊書のキャンペーンなど、『ちんどん本屋』として出版社のキャンペーンや既存の大型書店の出店としてご利用いただければ。近々、Ustreamの生中継にも挑戦したい」と展望を語る。
営業時間は昼ごろから日が沈むまで。土曜・日曜・祝日・雨天定休。移動販売中はツイッターで現在位置をツイートする。