東京都古書籍商業協同組合南部支部(以下、東京古書組合南部支部)は7月3日、古本屋開業を検討している人やネットで古本販売を始めている人などを対象とした無料セミナー「古本屋開業講座」を南部古書会館(品川区東五反田1、TEL 03-3441-3975)で開催した。同支部では初の試み。
東京古書組合は、東京都の認可を受けた古書籍業者の協同組合。東京古書会館(千代田区)のある神田支部ら7つの支部で構成され、日本最大の古本検索サイト「日本の古本屋」を運営している。南部支部は、東京都南部地域(品川区、渋谷区、港区、中央区、目黒区、世田谷区、大田区)の古書販売事業を営む店主が組合員となり、古書籍市場の開催・運営、古書取引に関する情報提供、古書に関する知識の啓蒙・普及活動などを行っている。
同講座は事前予約制で、当日は定員の50人が参加。中には、静岡や大阪など地方から駆け付けた受講者も。講座を企画した「古本うさぎ書林」(東大井1)の芳賀健治さんが進行役となり、堀江一郎さん(古書一路)、藤田譲一さん(古書田八)、加勢理枝さん(ほん吉)、西村康樹さん(西村文生堂)が講師として登場。自店の営業スタイルや体験談、同組合の活動などを披露した。
質疑応答で盛り上がった話題は、ネットショップにおける仕入れ方・売り方や具体的な値付け方法など。同支部事業部長でもある西村さんは「今は古本屋を何軒も回って探さなくても、お目当ての本がネットで簡単に見つかる時代。店主は当然、アマゾンの中古品価格をチェックしている。ただ、長年の経験と日々の情報交換が物を言う世界。不当に高値をつけているケースもあり、あくまで参考程度にとどめている。1000円で仕入れた本が2万円で売れるラッキーは年に何度もない。それよりも、1万円で仕入れた本を2万円でコツコツ売り続けられるか、毎週の仕入れ価格を先細りさせることなく続けられるかが大事」と、店主ならではの具体的な原価計算やノウハウに触れ、受講生をうならせる一幕も。
今回の講座開講の背景について、芳賀さんは「長い目で見ると、東京古書組合の組合員減少を心配している。インターネットの普及・発展によって、ネット古本屋開業のハードルは下がったが、個人の力では本格的に事業化するには限界がある。組合に加入すれば、自店では不要の古本を持ち寄り、他店が出品した品を持ち帰る『交換会』に参加できるなど、仕入れ面におけるメリットも多い。何より、経験豊かな店主との情報交換は貴重な財産になるはず」と話す。
一方、古書業界の将来展望については、「例えばネットの古本屋の場合、本の解説文に力を入れたり、写真点数を増やしたりして商品のコンディションをしっかり見せるなど、店主がやるべき努力をすればするほど報われる状況にある。古本屋が増える=商売敵が増えるのではなく、互いが得意ジャンルを強化することで共存共栄を目指したい。数年後、この講座に参加して古本屋を始めたと声をかけられたら、こんなにうれしいことはない」と笑顔をみせる。