
品川区は3月3日、品川区役所でトイレトラック派遣協力の協定締結式を行い、同役所第2駐車場でトイレトラックを披露した。
トイレトラックは、災害時に断水や停電などで水洗トイレが使えなくなる事態を想定して開発したトイレの移動トラック。導入自治体は全国29カ所目で、23区では初。品川区は助けあいジャパン(静岡県)が企画する災害派遣トイレネットワークプロジェクト「みんな元気になるトイレ」に参画し、災害が起こった地域にトイレトラックを派遣する協定を結んだ。
導入の背景について、森澤恭子品川区長は「令和6年能登半島地震では、断水や停電で水洗トイレが使えない事態になり、生活環境の悪化が大きな課題となった。さらに、令和5年度に行った全区民アンケートによると、災害時の避難場所確保や衛生・プライバシー環境の改善について高い関心がうかがえる。これらを受け、トイレトラックの導入と災害派遣トイレネットワークへの参画を決めた。首都直下型地震への備えだけでなく、被災地支援の助け合いの輪を広げていきたい」と話す。
トラック内部には洋式トイレ4つに加え、オストメイト対応設備やおむつ交換台、ベビーキープを備えた多目的トイレ1つを設置する。多目的トイレ側には電動の昇降機を備え、車いす利用者も使える。太陽光発電の設備によって、停電時や夜間でも周囲やトイレ内を明るくできる。
トイレトラックの導入に当たり、品川区はクラウドファンディングを行い、購入費用の約2,600万円に対して約1,423万円の寄付を集めた。車体のデザインは、品川地区と大崎地区、大井地区、大井・八潮地区、荏原地区の代表的な風景を描いた複数の案を用意し、区民アンケートで投票の多かった目黒川の桜としながわ花海道のデザインを選んだ。
協定締結を行った助けあいジャパン共同代表の石川淳哉さんは、「トイレトラックは導入して終わりではない。自治体職員がトイレトラックの仕組みを理解してスムーズに運用できるよう、助けあいジャパンのスタッフが職員向けに年2回の訓練を行っている。品川区からの要望があれば、スタッフが被災地へ同行する予定。今後も、各自治体とのパートナーシップを結んでいければ」と話す。
品川区防災整備担当課長の羽鳥匡彦さんは「トイレトラックを導入して災害派遣ネットワークに参画できた意義は大きい。23区で初導入した区の役目として、支援の輪を広げていきたい」と意気込む。「3月9日に行われる品川シティランが初稼働で、しながわ区民公園パークセンターに設置する予定。ジュニアランなどのゴール地点で、子ども向けの景品としてトイレトラックのペーパークラフトも配布する。身近に感じてもらえれば」とも。