五反田駅から蒲田駅を結ぶ東急池上線沿線で10月9日、開通90周年を記念したイベント「フリー乗車デー」が行われた。同イベントは、東急池上線を利用する全乗車客に対して、全駅で乗り降り自由な「1日フリー乗車券」を配布するもの。主催は東京急行電鉄。

生活名所の1つ「焼鳥エビス」に並ぶ人々

　同社によると、1日で発行した無料乗車券の枚数は約21万枚。池上線の1日の平均利用客数約12万人に比べて、プラス約9万人が池上線を利用した計算になる。イベント当日は戸越銀座駅の混雑ぶりに、「池上線」「戸越銀座」がツイッターのトレンド入りするなど、SNSでも話題になった。

　当日は池上線沿線地域で、「生活名所」として選定されたスポットを中心に各種イベントを開催。戸越銀座商店街では、コロッケ1個が無料でもらえる「歩きコロッケカード」の配布や「池上線レモンサワー」の限定販売などが行われ、それぞれのスポットに長蛇の列ができた。

　特注家具や家具の修理・修繕を手掛けるミネルバ（品川区平塚1）の総務部長・宮本麻衣さんは「私たちは池上線全線の駅のベンチや宮内庁の椅子を作っている。BtoBビジネスが中心なので、一般の方からの知名度はまだまだ低いと感じていた。生活名所に選ばれたことをきっかけに、戸越銀座にはこんな場所もあるのかという新しい発見になればうれしい」と話す。

　そのほか、品川区の生活名所として、五反田「目黒川」「TOCビル」「トレッスル橋」、大崎広小路「信濃屋」、戸越銀座の「焼鳥エビス」「ミネルバ」、荏原中延「街のお助けコンセルジュ」、「昭和通り商店会の夕市」、旗の台の「沖田精米」「ブンブンブラウカフェウィズビーハイブ」などが選ばれている。

　親子2人で来たという参加者は「東急沿線を利用した際、この催しを知った。池上線は普段あまり使わないが、戸越銀座には一度来てみたかったのでいい機会になった。混雑で見られなかった場所もあるので、また別の機会にゆっくり楽しみたい」と話す。

　初めて池上線に乗車したというカップルは「戸越銀座駅はとてもきれいで、街の雰囲気もよく、住みたくなった。せっかくのフリー乗車デーなので、池上本門寺などの有名スポットまで行って沿線を楽しみたい」とほほ笑んだ。

　同社広報部の加藤千咲さんは「混雑や、それによる遅延で迷惑をお掛けした面もあったが、多くの方に利用いただき、認知向上という目標は達成できたと感じている。今後も引き続き、関係者の皆さまと連携しながら『生活名所』というコンセプトの下、池上線の魅力を発信していきたい」と話す。