西小山駅近くの銭湯「東京浴場」(品川区小山6、TEL 03-6421-5739)が7月1日、棚貸し式の書店「フロナカ書店街」のサービスを始め、出店者を募集している。
廃業する銭湯の運営を引き継ぎ、持ち主に家賃を支払う「銭湯代行業」を手掛けるニコニコ温泉(静岡県)が経営する同店。休憩スペースの中央に2階建ての本棚を据え、約7000冊の漫画や絵本を並べる。
同サービスは「西日暮里 BOOK APARTMENT(ブック アパートメント)」(荒川区)を参考にしたという。開始の経緯について、ニコニコ温泉広報担当の田川あす美さんは「さまざまな本屋が集まる書店街を銭湯の施設内に作ってみたいという思いがきっかけ。自分の店を開いてみたい人、何かを発信したい人を応援しつつ、入浴料以外から収益を得るビジネスモデルを考えた」と話す。
「フロナカ書店街」の設置場所は、同浴場のロビー奥。31センチ四方の箱形の棚1つを「ミセ」として貸し出す。販売できるのは、書籍や雑誌の新刊、個人の蔵書、「ZINE(ジン)」と呼ばれる自主制作の小冊子など、紙媒体のみ。「ミセ」は店主のコンセプトに合わせてカスタマイズが可能で、屋号などを自由に入れた看板を掲げることができる。商品の値段は100円単位で店主が設定でき、「フロナカ書店街スリップ(売上伝票)」に記入する。
賃料は月4,000円。売り上げは3カ月ごとに取りまとめ、1万円以上になれば店主の口座に振り込まれる。店主と同伴者1名は、入浴時にレンタルタオルが無料になる特典も。
7月12日現在、先着70軒のうち35人が申し込んでいる。申し込みは、公式ホームページの申し込みフォームから受け付ける。出店が決まり次第、順次開店していく。書籍の搬入は、同店の営業時間内に店主が来店する方法か、郵送で商品を送って同店スタッフが陳列する方法を選べる。「ミセ」の場所は搬入順に決まり、郵送の場合は場所を選べない。
出店者で作家の高城つかささんは「誰でも本屋さんになれるという気軽さ、東京浴場へ行くきっかけが増えるところに魅力を感じた。個人出版の本は、ネットやイベントなどで限られた人にしか届けられない。普段、銭湯を利用する多くの人に手に取ってもらえるのはうれしい」と話す。
「自分の好きな本を売る人や自作本を売る人など、『ミセ』ごとに店主の個性があり、面白い。日によって棚が増えたり、内容が変わったりするのも魅力の1つ。さまざまな書店を眺めて、風呂上りの時間が良いものにしてほしい。お気に入りの1冊を見つけてみては」と田川さん。今後の展望について「全ての棚を埋めて、にぎやかな空間にしていきたい。ゆくゆくは、系列の銭湯にサービスを拡大させたい」と意欲を見せる。
営業時間は、5時~8時、14時~翌2時。入浴料は、大人(12歳以上)=470円、中人(6歳以上12歳未満)=180円、小人(6歳未満)=80円。