提供:品川区|取材・文:ノオト
JR横須賀線・西大井駅前にある「西大井創業支援センター」が2022年2月1日、リニューアル開業しました。同施設は「起業の0.5歩」を応援し、社会人から学生まで幅広い年代の起業家をハード・ソフト両面で手厚くサポートしていきます。
昨年10~12月に募集した第1期会員は、書類選考や面接を経て総勢12名が決定。施設オープン初日は感染症対策を講じた上で記念イベントを実施し、起業を目指す第1期会員が集まりました。
さらに、今回のオープンと同時に第2期会員の募集をスタート。完成した西大井創業支援センターから施設の様子をリポートしつつ、詳しい募集要項をまとめてみましょう。
昨年の夏から大規模リニューアル工事が始まった西大井創業支援センターが、ついに完成しました。同施設は2003(平成15)年、品川区が最初に開設した創業支援施設です。
以前は区画を細かく区切った「個別ブース」でプライバシーを確保していましたが、利用者同士の交流を活発化するために、コワーキングスペースや多目的スペースをメインにリニューアル。延床面積は約82坪で、明るくゆったりとした心地よい空間に生まれ変わりました。
今回のリニューアルで、同施設には「PORT2401(ポート ニシオオイ)」の愛称がつけられました。今後は「起業の0.5歩」を応援する施設として、ソーシャルビジネスや学生起業を中心にサポートしていきます。
JR西大井駅改札を出ると、右前方にそびえ立つJタワー西大井イーストタワー。その1階「マクドナルド 西大井店」を右手にぐるっと建物を回りながら2階へと続く階段を登り、デッキ伝いに進むと、PORT2401のエントランスにたどり着きます。
入り口正面の受付には、運営スタッフやコミュニティマネジャーが常駐し、利用者からの質問やリクエストに対応します。コミュニティスペースは、インキュベーションマネジャーや各種専門家とのミーティングの場です。
コミュニケーションが生まれる場として、施設中央に設置したキッチンスペース。コーヒーを入れたり、お弁当を温めたり、ちょっとした調理をしたりと、会員は備え付けの設備を自由に使えます。イベント時は、ケータリング調理やテストキッチンとしてご利用ください。
スペース中央の柱の向こう側には、会員やドロップイン利用者が使えるオープンな多目的スペースがあります。プロジェクターやスクリーン、ステージを備えているので、セミナーや説明会、ワークショップなど、各種イベント会場として利用できます(要事前予約)。
受付からもっとも遠い奥のエリアは、集中して作業できるスペースです。会員になれば、郵便受けや荷物を保管する個別のロッカーを使うことができます。もちろん、住所利用や法人登記もOK。創業の準備段階から自社オフィスとして利用できます。
オープンなスペースでは話しづらい打ち合わせのために、2つの会議室(8席、6席)を用意しました。より大人数で使いたい場合は、間仕切りを外して対応できます。予約はインターネット経由ででき、使用料はオンライン決済可能です。
会員が企画・開発する製品やサービス資料を展示するスペースです。ガラス張りで外からの視認性がよいため、このスペースに商品やサービスを展示・販売すれば、テストマーケティングや第三者からの意見収集の場になりそうです。
西大井駅前のタワーマンション2階ながら、南側はゆるやかな勾配があるため、眺望は少し高さのある1階目線。建物の構造上、少し奥まった場所で十分なひさしがあるため、直射日光は施設の中まで入り込まず、日中は優しい光が差し込みます。
リニューアルオープンを迎えた西大井創業支援センターでは、12人の第1期会員が起業の船出の準備に入りました。さらに、オープン直後から第2期会員募集をスタート。はたしてどんな起業仲間を募っているのでしょうか。施設のコミュニティマネジャーを兼務するを兼務する、センター長の野田賀一(よしかず)さんと広報の田村みずほさんに話を伺いました。
センター長の野田さん(左)と広報の田村さん
――PORT2401がついにリニューアルオープンしました。生まれ変わった西大井創業支援センターについて、率直な感想をお願いします。
野田さん:施設のリニューアルはコンセプトから関わらせていただいたので、完成してホッとしている気持ちと、これからしっかり運営していこうという気持ちが半々ですね。第1期会員のみなさんから「とても快適な施設です」と言っていただいたのは、率直にうれしかったです。
田村さん:設計や施工段階では、どんな会員さんがこの場所を利用するのか実感がわかなかったのですが、オープン日を迎えてようやく見えてきました。新施設の内装デザインは、細部に至るまで品川区や設計者のこだわりや想いが詰まっているので、長く大切に運営していきたいですね。
――新しく生まれ変わった西大井創業支援センターで、特にお気に入りのスペースや施工の工夫はありますか?
田村さん:私は2つあります。1つは会議室にある窓。外部に話がもれないようしっかり仕切る場所は、どうしても壁に圧迫されるスペースになりがちなのですが、窓があることで施設全体の解放的な雰囲気に馴染んでいます。ブラインドを下げれば機密性も担保できるので、きめ細かな工夫ですね。
コワーキングスペースのウォールペイント
もう1つは、コワーキングスペースの壁に描いたウォールペイントです。この施設は全体的にかっこいい仕上がりになっていますが、品川区に点在する創業支援センターを模した壁は、アットホームな雰囲気を作り出すアクセントになっていると思います。
野田さん:私はキッチンです。通常、給湯室はオフィスの隅っこや廊下の端っこにあり、このように中央に配置することはなかなかありません。働く空間には雑談が生まれる余白を作ることが大切で、この施設では中央のキッチンがその役割を担ってくれています。オンとオフの切り替え地点といいますか、PORTの中のPORTみたいな存在ですね。
多目的スペースのステージ(収納可)
あとマニアックな場所ですが、多目的スペースの跳ね上げステージです。イベントの登壇場所を省スペースにうまく収めることができました。セミナーやパネルディスカッションなど、あらゆるイベントにマッチしそうです。
ステージ上にある天井のルーバーはスクリーンの埋め込みを見えづらくして、空間デザインにしっかり馴染んでいます。設計士さんや施工業者さんがディティールまでしっかり丁寧に仕上げてくれたので、とても心地よいスペースになりました。
――こらからの施設運営で、大事にしたいと考えていることは何ですか?
田村さん:設備の環境はしっかりできたので、運営ではコミュニケーションを大事にしていきたいですね。ただの快適な作業場所だけにならないよう、会員さんたちとの適度な雑談も含め、仲間同士が話しやすい雰囲気を作っていければと考えています。まさにこれがコミュニティマネジャーの仕事だな、と。
野田さん:PORT2401では、インキュベーションマネジャーがビジネスを円滑に進めるための壁打ちやフィードバックを伴走支援してくれます。これは起業のテクニカルな面ですね。一方、私たちコミュニティマネジャーは、主にメンタル面でのサポートをできればと考えています。起業には悩みや葛藤がつきものですので。
――第1期会員さんが、さっそくPORT2401を利用されています。どんな方がいらっしゃいますか?
野田さん:職種としては、システム開発やTOEICのコーティング、地方創生など、多岐にわたります。共通しているのは、自分が感じている課題について、自分なりのビジネスモデルで挑戦しようとしている点でしょうか。
田村さん:年齢層もかなりばらついていますね。学生さんもいれば、30代で企業勤めをしながら副業での起業を検討している会社員、さらには結婚・出産を経て起業を目指す主婦もいます。
野田さん:課題の大小や社会課題と結びついているかどうかといった違いはあるものの、根底にあるのは「誰かの役に立ちたい」と考える方が圧倒的に多い印象ですね。
田村さん:第1期会員募集の面談では、最初の10分間で自己紹介と事業説明をしていただきました。おそらく初めての事業計画書づくりだったようですが、これは大きな「起業の0.5歩」だったのではないかと思います。
野田さん:私の印象ですが、第1期会員のみなさんはそれぞれ自分のビジネスモデルがしっかりと頭の中にあって、誰のための商品やサービスなのか、自分自身はどうしていきたいのか、言葉の一つひとつに熱意を感じました。同時に、自分には何が足りないのかという客観性もあって、この施設で伴走支援を受けながら起業を目指す強い意思を持った方が多い印象ですね。
――2月1日のリニューアルオープンと同時に、第2期会員の募集をスタートしました。どんな方からの応募を待っているのでしょうか?
田村さん:学生、社会人を問わず、まずは一人で法人化を目指す方をお待ちしています。起業して、従業員を抱えたりオフィスを契約したりすると、安易に後戻りできないイメージってありますよね。でも、自分らしい生き方を考えるなら、まずはリスクの低い一人起業という選択肢は十分あり得ると思います。
野田さん:そうですね。すでに企業で働いている社会人は、組織の中から社会課題が見えてくることがあります。それが自分の課題とオーバーラップすると、起業のきっかけになりやすいのです。一方、学生さんは社会経験の少なさゆえに、こういった実感がまだまだ少ないかもしれません。
ただ、学生時代に起業マインドをもっておけば、最終的に就職活動をするにせよ、社会人として同世代から抜きん出た存在になれるはずです。そして、将来的に自分らしい人生をデザインするとき、起業という選択肢が他の人より身近に感じられるのではないでしょうか。
学生時代の起業は、人生におけるキャリアの選択肢を1つ増やすことになります。社会に出る手段としての就職活動とは別軸で、学生さんには自らやりたいことを探し、志を持って取り組む機会を持っていただきたいですね。西大井創業支援センターはそういう方を歓迎し、しっかりとサポートしていきます。
PORT2401は2月1日、第2期利用会員の募集を開始しました。以下をご確認の上、エントリーをご検討ください。
1) エントリー
期間:2022年2月1日(火)~2月25日(金)
※エントリーした方全員にメールで必要書類をお送りします。各書類に記入し、同メールに記載されている郵送先にお送りください。
2)書類提出
期間:2022年2月3日(木)~2月28日(月)17:00 ※郵送で必着
必要書類に必要情報を記入の上、メールに記載されている郵送先にお送りください。
3)書類選考
期間:書類提出後~2022年3月上旬
書類選考の上、メールにて結果をお伝えいたします。
[施設概要] 品川区立西大井創業支援センター PORT2401
住所:東京都品川区西大井1-1-2 Jタワー西大井イーストタワー 2階
[アクセス] ●電車
JR横須賀線・湘南新宿ライン・相鉄線直通 西大井駅 徒歩1分
●バス
東急バス
大井町駅西口から西大井駅行で終点 徒歩1分
荏原営業所行で西大井駅入口 徒歩1分
品川区コミュニティバス(令和4年3月~運行開始予定)
大森駅北口から西大井駅行で終点 徒歩1分