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荏原中延「隣町珈琲」がトークイベント 3月中旬に文芸誌発刊へ

左から「隣町珈琲」店主の平川克美さん、地域文芸誌「mal”(マル)」寄稿者の内田樹さん、小田嶋隆さん

左から「隣町珈琲」店主の平川克美さん、地域文芸誌「mal”(マル)」寄稿者の内田樹さん、小田嶋隆さん

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 トークイベント「いま、東京(ローカル)から文化を発信するということ」が2月5日、スクエア荏原(品川区荏原4)で開催された。主催は荏原中延駅近くの喫茶店「隣町珈琲(カフェ)」(中延2、TEL 03-6451-3943)。店主で文筆家の平川克美さん、思想家の内田樹さん、コラムニストの小田嶋隆さんが登壇した。

 2020年で開店6周年を迎える同店。店内には文化や歴史、思想などに関する書籍約1200冊をそろえるほか、大学教授や作家、文化人が定期的にイベントや勉強会を行う。

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 3月中旬に地域文芸誌「mal"(マル)」を発刊予定。地域や同店にゆかりのある作家、学者、文化人など29人が参加し、編集や版下制作は常連客など関係者が担当する。70歳まで旋盤工でありながら執筆を続けてきた大森出身の作家・小関智弘さんへのインタビューやミュージシャンの大瀧詠一さんを取り上げる企画などを掲載予定。発刊予定部数は2000部。同店で販売するほか、書店流通も検討する。

 同イベントは、発刊に先駆け地域に根ざした文化を伝えることをテーマに行われた。来場者は約150人。

 オープニングでは、「mal"」の制作背景や概要を紹介。開店5周年を迎えたころに店長の栗田佳幸(よしゆき)さんや常連客の間で雑誌創刊の話が持ち上がり、「あっという間に話が進んだ」という。

 地域文化の発信について、「そこまでの気負いはない」と前置きする店主の平川さん。1960年代のイギリスで音楽やアートが盛り上がりを見せた例を挙げ、政治や経済が衰退局面にある現在の日本で、文化の面から何かを発信することの可能性に言及した。

 トーク前半では、1950年代に東京南部(大田区・品川区・港区)で生まれた「下丸子文化集団」の歴史を皮切りに、地域を支える文化についての考察が行われた。

 小学校の同級生である平川さんと内田さんは大田区の出身。「ものを持たない工場地域から文化が生まれた歴史には希望がある」と平川さん。かつて大森にあった古書店「山王書房」店主の著作「昔日の客」にまつわる地縁や人間関係を挙げ、地域文化は「ささやかなものかもしれないが、しぶとく、ずっと残る」と話す。

 後半は、「現在の東京に住む人は、地方都市の住人に比べて街の衰退に鈍いのでは」という小田嶋さんの指摘から、各自の地元に対する地域観の話題に。1964(昭和39)年の東京オリンピックが地域の姿を変えたという話題も上がった。

 「mal"」の今後の展開について「今後は大森の文化として山王書房を取り上げたい。執筆陣も絞っている段階」と平川さん。「続かないのでは」と心配する内田さんをよそに、「経営面を考えるメンバーがいないのが運営上の欠点。どう切り抜けたかは、いつか後日談として皆さんにお話ししたい。今後もごひいきに」と締めくくり、会場を笑わせた。

 常連客だという来場者は「大田区在住で、隣町珈琲をきっかけに荏原中延へ通うようになった。誌面上でなじみの地名を見つけるのが楽しみ」と笑顔を見せる。

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