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書籍「世界は五反田から始まった」発売 戸越銀座出身の著者が祖父の手記を読み解く

著者の星野博美さん

著者の星野博美さん

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 書籍「世界は五反田から始まった」(ゲンロン叢書)が7月20日に発売され、地元・五反田の書店で平積み展開されている。著者は戸越銀座出身でノンフィクション作家の星野博美さん、版元はゲンロン(品川区西五反田2)。

「世界は五反田から始まった」

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 星野さんは1966(昭和41)年に戸越銀座の町工場の三女として生まれ、独立後は都内や香港で生活し、2007(平成19)年から再び戸越銀座の住民となった。「人口密集地で育ち、ここから逃れられない感覚にあらがう時期を経て、なぜここが自分の故郷なのか考えるようになった」と星野さん。著作「コンニャク屋漂流記」(文芸春秋)では家族のルーツを探り、「戸越銀座でつかまえて」(朝日新聞出版)では地元での生活をつづった。

 「世界は五反田から始まった」は、月間電子誌「ゲンロンβ」に2019年から連載した内容を書籍化。執筆には品川区立図書館の郷土資料も活用し、地元読者からSNSで情報が寄せられることもあったという。

 自らの故郷について、星野さんは「説明する相手に合わせて品川や五反田、戸越銀座といった地名を使い分け、揺らぎがあった」と振り返る。本書では故郷だと感じる範囲を地図上で捉え直し、五反田駅を中心に半径1.5キロ圏内を「大五反田」と定義する。

 さらに、星野さんは本書で祖父・量太郎さんと「大五反田」の結びつきに着目。量太郎さんは1936(昭和11)年から芝白金三光町(現在の港区白金)の町工場で働き、独立後は戸越銀座でバルブコック製造業を営んでいたという。量太郎さんが生前に残した手記を読み解き、第一次世界大戦を契機に発展した町工場の様子をはじめ、昭和初期に小林多喜二「党生活者」や宮本百合子「乳房」の舞台となった町の風景、1943(昭和18)年に武蔵小山から商店街ぐるみで満州へ渡った荏原郷開拓団など、さまざまな地域史に触れている。幼少期に量太郎さんから聞かされた「ここが焼け野原になったら、すぐに戻って杭を打て」という言葉をきっかけに、第二次世界大戦時の東京大空襲・城南空襲を経験した人々の姿にも迫る。

 価格は1,980円。五反田駅前の書店「ブックファースト 五反田店」の特設コーナーには、星野さんの著書のほか、同書に登場する文学作品、地域関連書籍が並ぶ。同店での購入特典として「五反田の歴史を体感するTOUR(ツアー)」マップを用意する。

 星野さんは「五反田は、皆さんがそれぞれのイメージを持っており混沌(こんとん)としていて中心が見えない街。世界は本当に五反田から始まったわけではないが、ここから見える世界が確実にある」と話す。

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