品川橋南詰めにある「旧品川警察署品川橋交通待機所」(南品川1)が8月7日、国の登録有形文化財(建造物)となった。国の文化審議会から同建造物を登録するよう文部科学大臣に答申されたのは今年3月17日。
同建物は1929(昭和4)年に完成。旧東海道の交通要所で往来が盛んな場所であったことから、安全のために地域住民から交番設置が求められたといわれる。交番としての役目を終えた後は、地元町会などの防災倉庫として使用されていた。区の景観資源・文化財として保存しようと、2020年に品川区が東京都から買い受け、2021年に修景工事を開始。2022年から「南品川櫻(さくら)河岸まちなか観光案内所」として活用されている。
登録の経緯について、品川区教育委員会事務局庶務課文化財係の担当者は「東京都から品川区に当建物が譲渡されたことをきっかけに、文化財的価値を鑑み、登録へ向けて動き出した」と話す。
往来する人や車を視認しやすくするために設置された縦長の上下窓や、入り口に設けた完成当時流行したアール・デコの意匠であるひさし付き欠円アーチなどが特徴。木造建築ながら鉄網コンクリートの壁で耐震化と不燃化を図っている。同様の交番建物は都内での残存事例が少なく、1923(大正12)年の関東大震災後に耐火構造で建てられた戦前の交番遺構として、また昭和初期の品川宿の景観を現在に伝えるものとして、貴重な建物だという。
国の登録有形文化財(建造物)となった地元の反響について、区担当者は「地域の方々は喜んでいる様子。普段は週3日のみの開館だが、11月3日から5日まで行われる文化財一般公開では3日間を通して開館する予定」と話す。「地域住民から長く愛されるシンボル的な建物。今回の登録ニュースが、区内・区外問わず多くの方々に知ってもらう機会になれば」と話す。
観光案内所の開所日時は、月曜・木曜・土曜の10時~17時。