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ハマナカデザインスタジオのデジタルファブリケーション最前線

提供:品川区社会貢献認定製品事業 制作:品川経済新聞

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障がいやハンディのある人が、日常生活を送りやすくするための「自助具」。専用のカタログから商品を選び、自分に合ったものがなければ手に入らないのが「これまでの普通」でした。

ところが、合同会社ハマナカデザインスタジオが運営するファブラボ品川はそんな状況に異議を唱え、デジタルファブリケーションを活用した「自助具」づくりをサポートしています。具体的にどのような活動をしているのでしょうか。気になるスタジオを訪問してみました。

アイデア共有とリミックスで自分専用の自助具を作る

中延駅すぐの場所にある「ファブラボ品川」

「ファブラボ品川」にやってきました。ファブラボ品川は、デジタル・アナログ各種の工作機器を揃え、地域市民に開かれたものづくりスペースです。扉を開けてまず目に飛び込んできたのは、忙しそうに動く3Dプリンターでした。

自助具を出力する最中の3Dプリンター

「この3Dプリンターを使って、自分が必要な『自助具』を製作するサポートをしています」と説明してくれたのは、ハマナカデザインスタジオ代表の濱中直樹さんです。

同社の主な事業は、デジタルファブリケーションを生かしたものづくりとその支援活動。デジタルファブリケーションとは、デジタルデータをもとに、3Dプリンターやレーザー加工機といったデジタル工作機械を使ってモノを作る技術のことです。

ハマナカデザインスタジオ代表の濱中直樹さん

濱中さんはデジタルファブリケーションを用いたものづくりができる人を増やすため、3Dプリンターの導入支援や機材のレンタル、セミナーの開催などに取り組んでいます。

2019年5月から9月にかけて、「日本科学未来館」(江東区)で開催された「ぴったりファクトリ」展の1コーナーで、3Dプリンターでのものづくりを紹介するパネルを展示。会期中の来場者は約13万人にのぼり、大きな注目を集めました。

日本科学未来館(江東区)で開催された「ぴったりファクトリ」展で3Dプリンターでのものづくりを紹介する様子

濱中さんがデジタルファブリケーションと関わり始めたのは、10年ほど前。自らものづくりに関わるだけでなく、支援活動を始めたきっかけについて、「『デジタルファブリケーションなら何でもつくれますよ』と口で説明するだけでは、デジタルファブリケーションの持つ可能性が伝わらないことに気付いたためです」と話してくれました。

以前は地域活動として、小学校でプログラミング講習などを開いていた濱中さん。どういう経緯で、セラピスト向けにデジタルファブリケーションの認知活動をするようになったのでしょうか?

「セラピストの方々は、普段から自助具などを自作してみる機会が多いようです。しかし、デジタルファブリケーションについては、全く知らないという人がほとんどでした。多種多様かつ特有のニーズにアプローチをしやすい手段が、セラピストのみなさんに認知されていないのはもったいない。そこから本腰を入れて、ケアやリハビリにフォーカスした活動を開始しました」

3Dプリンターで制作された自助具や固定ギプス、手指の訓練具

3Dプリンターの製作物は、従来の製品と異なる特徴があります。

まずは、なんといっても製作コストの低減です。これまで樹脂の製品を作るには金型作成が必須で、莫大な時間と手間がかかりました。しかし、3Dプリンターによって、試作品が安く、早く、簡単に作れるようになったのです。その結果、試作品づくりで素早くたくさん失敗する、つまり改良を繰り返すことができるようになりました。

そして、コストのかかる金型作成が不要になったことで、これまで目が行き届かなかったニッチな分野へのチャレンジも容易になりました。つまり、一人ひとりが抱える固有の困りごとを解決しやすい環境が実現したわけです。

これまでは、具体的な自助具のアイデアが浮かんでも、それを形にできるのは工業デザイナーだけでした。しかし、これからはセラピストやエンジニアなど、専門外の人々が自らのアイデアを形にできる時代です。特に、障がいをもつ当事者が必要な道具を自分自身で製作できるのは、これまでにない社会参加の形なのかもしれません。

実際のところ、ファブラボ品川ではどのような試作品が製作されてきたのでしょうか。3種類の自助具をご紹介します。

(1)ペットボトルオープナー

握力の弱い人や指先に力を入れることが難しい人でも、ペットボトルを開けられるように作られた自助具。蛇口の形になっているので、説明書がなくても見た目で「回せば開く」ことが伝わります。

これでもまだ開けづらい人用に、蛇口の形ではなく棒がついた形のものもあります。1つのアイデアを横展開し、よりニッチなニーズに応える道具を作ることができます。

(2)車いすのブレーキ延長レバー

車いすを利用している人のうち、手の動作に支障がある人の場合、車いすのブレーキに手が届かないこともあるそうです。その問題を解決するために製作したのが、こちらの車いすのブレーキ延長レバーでした。

色も自由に選べるので、使う人が好きな色の組み合わせで製作します。「頭の部分は付け替えられるようになっていて,自分らしさを表現したり,ライフスタイルを反映することができます」と濱中さん。

(3)均等に文字を書くための自助具

こちらの自助具は、小学生向けに作られたものです。配置認識が上手くできないため、書いた文字同士が重なってしまう悩みを解決します。文字を書く際、ガイドになるものを作ることで解決できるのではないかというアイデアから生まれました。そして、この道具は、自らが障害当事者でありながら次項で触れるメイカソンへの参加をきっかけに3Dモデリング、3D プリンティングを始めた方がデザインしました。

当事者のニードノウアと実現する
ものづくりによる課題解決

ファブラボ品川では、一般社団法人ICTリハビリテーション研究会とともに「メイカソン」と呼ばれるイベントを定期的に開催しています。メイカソンとは、「メイク(make)」と「マラソン(marathon)」を掛け合わせた造語です。

このイベントでは、障がいを持つ当事者を「ニードノウア(Need Knower)」として、セラピストやエンジニア、デザイナーや一般の人など、6~7人でチームビルディングを行います。ニードノウアの困りごとをヒアリングし、課題解決のためのプロトタイピングを1~23日の間で進めていくのがメイカソンの主な流れです。

「ニードノウアも事前に自身の課題を考えてきてくれますが、ヒアリングによりご本人も気づいていない隠れたニード(Need)が新しく見つかる場合も少なくありません。参加者同士で対話を重ねながら、ニードノウアの抱えている本当の課題を引き出す。そしてアイデアスケッチに取り掛かり、製作するものを決めていきます」(濱中さん)

メイカソンで作られたプロトタイプは、パブリックドメインとして世界に共有されます。「誰かのニーズに特化したものだとしても、世界中で見ればそれを必要としている人がいる可能性はあります。その人たちもシェアされているデータをもとに、同じ物や必要な改変 (リミックス) をしたものを離れた場所でいつでも製作することができる。それがデジタルファブリケーションの良い点です」と濱中さんは解説します。

メイカソンで製作したプロトタイプは、プロトタイプのままでは終わらせません。メイカソン後には「リデザインカフェ」と呼ばれるイベントを実施し、ニードノウアが実際に自助具を使ってみたフィードバックから出た新たな課題を検証。アイデアを再度出し合って改善を図ります。

料理好きのニードノウアのために作られた自助具。右から左へと少しずつ改変が施されている

デジタルファブリケーションで目指す
「やりたいことを諦めなくていい世界」の実現

自助具製作の意義について、「大げさな言い方かもしれませんが、利用できる自助具の有無は、障がい者の尊厳にかかわる問題といえます」と濱中さん。従来の障がい当事者やハンディを持つ人向けの自助具は、福祉用品のカタログにあるものからしか選べないのが一般的でした。そして、そのカタログに自分が欲しいと思うものや合うものがなければ、やりたいことを諦めてしまわなくてはいけなかったのです。

「先ほどお見せした車いすのブレーキ延長レバーに関しては、通常ケアやリハビリの現場ではラップの紙芯で代用しています。車いすに乗る体験自体を楽しめるように、3Dプリンターで製作した自助具を活用できれば」

今後、濱中さんは社会をどう変えていきたいのでしょう。

「これまではデザイナーがクライアントのためにデザインする『Design for』が中心でした。しかし、これからは『Design for and Design with』、つまりデザイナーとユーザーが一緒にデザインをしていく分野が広がっていくだろうと予想しています」

「やりたいことがあるときに、道具が手に入らないことが理由でやりたいことを諦めなくてもいい。自分たちで道具を作ることができ、自分で作れなくても作れる誰かと一緒に作れる。そのことを知ってもらうため、今後も活動を続けていきたいですね」

“誰も一人取り残さない”という世界観が当然のものとなり、SDGsにも謳われる「インクルーシブ(inclusive)」という言葉が必要なくなる世界の実現。これが濱中さんの目標だ。

5月に開催予定のだった (COVID-19 に関わる状況により秋に延期)メイカソンのタイトルは、日本で初開催となる「2020 TOMメイカソンTOKYO」。TOMは障がいを持つ当事者へのデジタルファブリケーションを活用した支援活動が活発なイスラエルを拠点とするNPO団体です。今回はそのライセンスを一般社団法人ICTリハビリテーション研究会が取得し、日本でのイベント実施初開催に至たりました。延期が決まった同イベントですが今後も参加希望者への情報発信を続けるそうです。

また、ファブラボ品川は定期的にワークショップを開催しているほか,講習を受ければ、事前予約の上、機材を誰でも利用できます。デジタルファブリケーションをいつでも気軽に体験できる貴重な施設です。

同社では、3Dプリンターの導入支援や3Dプリンターのレンタルも行っています。各世帯や企業に一台は3Dプリンターがあり、日常生活の中で困ったことがあったらデジタルファブリケーションを自ら行う。そんな時代もそう遠くはないかもしれません。合同会社ハマナカデザインスタジオとファブラボ品川の今後の活動に注目してみましょう。

品川区社会貢献認定製品事業とは

品川区は、2018(平成30)年度から中小企業の優れた自社技術・製品・サービスで社会貢献に寄与し、指定のテーマに該当するものを「社会貢献認定製品」として認定しています。認定製品は、品川区への試作・導入などの積極的な販路拡大支援を受けることができます。

2019年度は9社9製品が認定されました。

合同会社ハマナカデザインスタジオ

ファブラボ品川

〒142-0053 東京都品川区中延4-6-15

執筆:年永亜美

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