京急・青物横丁駅近くの青物横丁商店街で3月19日、「あおよこ一箱古本市」が行われた。
一箱古本市は、参加者が段ボール一箱分の本を持ち寄る古本市。2005年に谷根千エリアで開催された「不忍ブックストリートの一箱古本市」をきっかけとして全国各地で行われている。
同イベントを企画したのは、「あおよこ一箱古本市実行委員会」の高橋久美子さんと鈴木賢彦さん。品川区内で働いている高橋さんが、昨年9月に行われた「しながわ宿場まつり」のころから同商店街の人たちと関わるようになり、「もっと商店街に人を呼び込みたい」と思ったという。「幼いころ、青物横丁商店街で買い物をしていたので思い出のある場所。青物横丁の地名は、野菜やフルーツなどの青物や品川沖の魚介類を持ち寄る市場があったことが由来していると聞き、さまざまな人が『持ち寄る』をテーマに据えた」(高橋さん)。
年齢を問わず楽しめるイベントとして本を選び、一箱古本市を開催するに至った。当初、メーン会場は城南小学校(品川区南品川2)と城南幼稚園(同)を予定していたが、東日本大震災の影響でイベント利用が中止に。イベント延期を検討していたが「こんなときだからこそ、みんなが明るい気持ちになれるイベントを延期せずにやってほしい」という声や新たに会場提供の申し出があり、予定通り行う運びとなった。
会場はアイトー・ショップ&ショールームの店頭スペース(同)とスーパー平野屋2階の「スパゲッティハウス オリーブ」隣りの中庭スペース。地元住民や区外から10組の店主が集まった。それぞれが思い思いに古本を並べ、商店街を行き交う人々が物珍しそうに立ち寄る姿も。
千葉県でアート本専門のブックカフェを営んでいる宝川紘司さんは「バザーのようなイベントに出店したことはあるが古本市は初めて。青物横丁は人通りが多くて驚いている」と話す。本とともに自作のポストカードなどを販売していたイラストレーターの鈴野麻衣さんは「まだ不安定な状況で家にいても気分がふさいでしまうので良い気分転換になった」と顔をほころばす。
イベントを終えて鈴木さんは「大地震から時間がたっていないこともあり、店主やお客さんが来てくれるのか不安だったが、ふたを開けてみたら会場にいるどの人もニコニコしていた。自分も震災後、ずっと気分が落ち込んでいたので、皆さんの笑顔を見て元気をいただけたのが救い。規模は縮小したが、延期しないで良かった」とほっと胸をなでおろす。
今後について、高橋さんは「次回は9月上旬ごろの開催を予定している。商店街が好きなので、人と街をつなげていきたい。本はその選択肢のひとつとして、今後も定期的にイベントを開催していきたい。特に子どもたちの可能性を広げていけるような試みを行うことができれば」と話す。
同イベントの出店料や売上金の一部を日本赤十字社へ寄付するという。このほか、被災地へ寄付するための衣類40箱弱も集まり、青物横丁商店街振興組合とともに品川区役所へ送り届けた。