戸越八幡神社(品川区戸越2、TEL 03-3781-4186)が12月10日、御社殿の改修工事を終えた。同15日からは御社殿の参拝受け入れを再開した。施工は魚津社寺工務店(愛知県)。
室町時代の1526(大永6)年に建立した同神社。江戸時代から現存する総欅(けやき)造りの御社殿は、老朽化が激しい状態だったという。同神社では2016(平成28)年に「御鎮座五百年御社殿改修記念事業」を立ち上げ、今年1月15日から改修工事を進めていた。
今回の工事は、参拝場所である拝殿(はいでん)、御神体がある本殿、拝殿と本殿をつなぐ幣殿(へいでん)を元の位置から18メートル後方に移築。今年4月下旬から5月の連休まで約2週間かけて、建物を引っ張って移動する曳屋(ひきや)を行った。
屋根付近の木彫部分や木造の本殿は洗って汚れをとり、屋根には銅板を張った。拝殿の床と幣殿、本殿の階(きざはし)をスギやヒノキを使って改修した。工事に携わった人員は、のべ2600人。
移築後の建物は約1.5メートル高くなったため、正面に石段を新設。傾斜が急なため、年配者や子どもの参拝客を考慮して、傾斜のゆるやかな階段を御社殿の下手に取り付けた。階段を利用できない人には神職が降りて祈願するほか、今後はエレベーター設置も検討しているという。
12月15日、工事期は社務所に移していた御神体を本殿に移す遷座祭(せんざさい)が行われた。来年2月には、一連の改修についての記念誌販売を予定する。
魚津社寺工務店工事部の杉本強さんは「曳屋では、御神木にぶつからないよう御社殿の向きを90度回転し、一部を解体して組み直した。江戸時代の木造建築のため、解体してみないと組み方が分からないようになっていた」と話す。「移築後は建物の位置が高くなり、印象がかなり変化したのでは。御社殿の背後に大崎エリアの高層ビルが見えるのは新鮮」とも。
禰宜(ねぎ)の大石のりこさんは「今回の改修は、職人の皆さんによる技術のたまもの。江戸時代から残っている木造部分から、当時の空気を感じてもらえたら。灯籠などでライトアップしている夜のたたずまいもぜひ見てほしい」とほほ笑む。