「見慣れた景色の見えない防災写真展」が12月1日、エコルとごし(品川区豊町2)1階のコミュニティラウンジで始まった。
通常は立ち入ることのできない区内の防災施設内部を撮影した作品を紹介する同展。しながわ防災普及啓発強化事業「ジージョくんのいっぽ」の一企画として、防災地図の啓発を目的に行う。
撮影したのは、品川区出身のフォトグラファー・渡邉茂樹さん。渡邉さんはこれまで、古地図から品川用水の跡地をたどる写真展「品川用水の面影」や、区内を走る各路線や地形に注目した写真展「しながわ鉄道100景」などを企画してきた。
展示作品は、今年の夏に品川区防災まちづくり部の協力の下、第二戸越幹線、荏原南公園の雨水調整池、荏原調節池の3施設を1日で撮影したもの。それぞれB0サイズで印刷・展示し、撮影場所を示したマップを掲示する。
第二戸越幹線は整備工事中の下水道管で、雨水を目黒川に流す役割を持つ。戸越銀座通りの地下25メートルに位置し、直径3.5メートル、総延長約2.7キロ(平塚3~北品川3)。2017(平成29)年に整備工事が始まり、2026年度末に完成予定だという。作品では、工事期間中しか見られない作業車両用の軌道を捉えている。「緑色に見える光は撮影のライトではなく、管内の塗装を生かした色」と渡邉さん。
荏原南公園(荏原6)の地下にある雨水調整池は、主に立会川の増水による浸水被害を防ぐために作られた。25メートルプール50杯分の水をためることができるという。施設内部に光源がないため、撮影時は渡邉さんが照明機材を持ち込み、水を流すための坂の傾斜にフォーカスしたという。
目黒川・市場橋(西五反田3)付近の荏原調節池は地下4層構造で、最上層に設けられた取水口を地上から見ることができる。施設内に入り「地下神殿のようだ」と感じた渡邉さんが、取水口から内部に入る自然光を生かして撮影した。
写真展の会場では、防災地図(ハザードマップ)を配布するほか、第二戸越幹線の写真作品のポストカードを用意する。
「丘陵地が多い品川区は、大雨で雨水が流れ込みやすいエリア。見慣れた景色の地下に潜ると、普段目にすることのない防災施設が存在する。その巨大さや雰囲気に注目することで、作品としての手応えを感じた」と渡邉さん。防災まちづくり部の担当者は「視覚的に伝えることで、災害、特に風水害への備えに関心を持つきっかけになれば。もしもの対応を考える際には、区のハザードマップなどを活用してほしい」と話す。
開催時間は7時30分~21時。入場無料。12月25日まで。