資料展「『暗橋(あんきょう)』で楽しむ目黒・品川さんぽ展 暗渠(あんきょ)にかかる橋から見る街」が4月10日、フラヌール書店(品川区西五反田5)内のギャラリースペースで始まった。
主催は、暗渠に関する活動を展開する「暗渠マニアックス」の高山英男さんと吉村生さん。2人が執筆を手がけた書籍「『暗橋』で楽しむ東京さんぽ」(実業之日本社)の出版を記念し、さまざまな資料を紹介する。
同展における「暗渠」とは、川や水路の流れを地下に移したもの、それらの流れが絶たれた跡を含む。暗渠に架かる、もしくは架かっていた橋を「暗橋」と呼ぶ。今回の展示では、フラヌール書店から半径4キロ圏内にある暗渠や暗橋にフォーカスしたという。
目黒・品川エリアは江戸時代、玉川上水を源流とする品川用水が引かれていたが、昭和20年代以降に埋め立てられた。吉村さんは「品川用水の末流に当たるこのエリアは、至る所に水路跡がある。今回の展示では、本で取り上げた橋だけでなく、もっと多くの暗橋を紹介する」と話す。
展示は、「暗橋の名前を味わう」「暗橋の手触りを愛(め)でる」「暗橋の謎を追う」など9テーマで構成する。「暗橋を測る」では、古戸越(ことごえ)橋(西品川1)、庚塚(かのえづか)橋(大井7)などのスケッチを紹介する。「暗橋の昔の姿を見る」「暗橋で起きた事件を読む」では、昭和20年・30年代の品川区・目黒区の広報誌や新聞記事などから、暗橋に関する写真や記述を取り上げる。
高山さんは「2人ともそれぞれ興味のあるテーマを探っている。私は路上観察や分類などを通して地理軸で全体を見るタイプで、吉村さんは歴史や物語といった時間軸で深く捉えるのが持ち味」と話す。
会場では、品川区内在住のフォトグラファー・渡邉茂樹さんが2022年に主催した写真展「品川用水の面影」の作品パネル5点を展示する。同作品は、立会川から大森方面に流れた大井村分水、戸越公園から流れた古戸越川の周辺を撮影したもの。
このほか、オリジナル菓子の販売も行う。ライ麦とチョコ生地を使ったバターサブレの「暗橋サブレ」は、以前の商品から配色を反転したという。製作は「A.K Labo」(武蔵野市)。新たに考案したクッキー「暗渠蓋」(500円)は、ふたをした水路跡に朝日が差し込む様子を再現したもので、「手作りの店HANNAH(ハンナ)」が製作した。アーモンドビスケット生地にみそ入り生七味唐辛子を加え、伊勢抹茶でコケを表現する。「しばらくすると抹茶が退色するため、古き良き暗渠蓋に思いをはせることもできる」という。
店内では、暗渠マニアックスの著書をはじめ、フラヌール書店が選んだ関連書籍も販売する。
4月29日は、同店で19時からトークイベント「暗渠・暗橋で楽しむ目黒・品川さんぽ」を開く。暗渠マニアックスの2人と渡邉さんが登壇する。参加費=1,000円。申し込みはPeatixのイベントページで受け付ける。
「ご近所の方に見てほしい展示。昔の景色を知ると、街を歩いたときに景色が重層的に感じられるはず」と吉村さん。高山さんは「暗橋や暗渠は街を見るきっかけの一つ。もっと街を好きになり、新しい発見が増える機会になればうれしい」とほほ笑む。
開催時間は12時~20時(最終日は18時まで)。水曜、第1・第3日曜定休。5月14日まで。入場無料。