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中延「インストールの途中だビル」が取り壊しで閉鎖 「インストール完了」に

「インストールの途中だビル」クロージングパーティーの様子(写真提供=まちづくり会社ドラマチック)

「インストールの途中だビル」クロージングパーティーの様子(写真提供=まちづくり会社ドラマチック)

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 中延駅近くのシェアアトリエ「インストールの途中だビル」(品川区戸越6)が昨年12月31日に営業を終了し、1月25日にクロージングパーティーを開催した。運営は「まちづくり会社ドラマチック」(台東区)。

営業時のアトリエの一室(写真提供=中村絵)

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 同スペースは2012(平成24)年3月、空き家だったビル一棟をシェアアトリエにするプロジェクトとして開設。アトリエは2階~5階の4フロアで、営業終了時点では演劇団体やファッションデザイナー、彫刻家など17組40人が入居していた。

 営業終了の理由は、ビルの老朽化による取り壊しのため。同ビルは築50年を超え、アトリエ開設当初から将来的な解体が決まっており、時期は未定だったという。公式サイトでは、「13年経て、『インストールが完了(閉鎖)』することになりました」と発表した。

 運営会社社長の今村ひろゆきさんは「開設当初、ビルの所有者とは『まずは1年運営してみて、人が集まらなかったら閉じる』という話になっており、入居者にもそれを伝えていた。そうするとメンバーが頑張って人を呼んだりイベントを開催したりして人が集まり、どんどん発展していった」と振り返る。

 同スペースはアトリエとしての利用ほか、演劇の公演など各入居者が開催するイベントや、共有スペースを使った子ども向けワークショップ、普段は開放していないアトリエを一般入場者が見学できるイベント「インストールの途中だバル」、中延商店街の店舗や住人とコラボした地域イベント「中延EXPO」など、数々の企画を展開してきた。

 25日のクロージングパーティーには、入居者や卒業生、その友人など50人以上が参加。空っぽになったアトリエの見学のほか、入居者のインタビュー動画やビルを360度カメラで撮影した映像の上映を行い、再会を懐かしみながらビルの思い出を語り合ったという。アトリエの一角には、ビルの壁に直接書ける落書きコーナーも設け、来場者がメッセージやイラストを残した。

 インタビュー動画やビルの映像は、ウェブ上にアーカイブを公開する。入居者が作業する姿のほか、各部屋の3Dでの空間記録も用意し、在りし日のビルの様子を確認できる。今村さんは「アーティストやクリエーターが活動していた記録を残す目的はもちろん、この映像によって入居者同士の絆が深まり、今後の創作活動の継続を後押しできればと考えた。始まりと終わりが決まっていたこのビル自体が一つの作品のように感じられ、形として残したいという思いもある」と話す。

 「13年という長い年月の中で、想定していなかったたくさんの面白い人々と出会えた。入居時に年間生活費が40万円しかなかった駆け出しの作家が大成功したり、入居者同士で結婚したりしたこともあった」と今村さん。「入居者の仕事のステージやライフステージの変化を見守り、時には見送ってきた。感慨深いが悲壮感はない。建物はなくなるが、みんなで過ごした記憶や時間は残る。ここからまたそれぞれの場所で羽ばたいてくれたら」とエールを送る。

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