戸越銀座商店街が新型コロナウイルス感染症に対応する独自の「危機管理ガイドライン」を作成し、他エリアの商店街や店舗などからの問い合わせが相次いでいる。制作は戸越銀座商店街連合会。
制作協力は、品川区保健所、同区地域振興部商業・ものづくり課商店街支援係、戸越銀座エリアマネジメント、全国商店街支援センター。危機管理アドバイザーの国崎信江さんが監修する。ガイドラインは3部構成で、全26ページ。
「商店街全体としての対応」の章では、感染レベル別の店舗運営方針や、従業員や来店客が感染した際の対応フロー、イベントの実施方針などを示す。「各店舗での対応」の章では、来街者への注意喚起や感染予防に必要なアイテム一覧、スタッフの感染予防教育、感染対策などをまとめる。「共有情報」の章では、事業継続に向けて計画を促すほか、行政の取り組みや助成制度を案内する。巻末には、政府・都への連絡先、体調管理の記録用紙、感染者の接触状況調査票、保健所宛の感染者相談票、店舗掲示用のガイドラインが付いている。
同商店街では、2020年4月の緊急事態宣言時における人出が問題視され、問い合わせ窓口に100件以上の苦情や誹謗中傷が殺到したという。戸越銀座商店街連合会の遠藤利夫さんは「食料品店など、当時都が示した休業要請の対象外の店舗も多く、住宅エリアに近いことから、地元住民の利用が目立ったのでは」と話す。
この騒動への対策として昨年夏、今後の感染拡大を見越したガイドライン作成の構想が始まった。商店街のアイデアをもとに危機管理アドバイザーの国崎さんが骨子を作成し、保健所のチェックを得て取りまとめたという。制作期間は約3カ月。
「店側からもガイドライン作成の要望があった。感染予防策は一般にも周知が進んでいるが、実際に感染の疑いがある場合の対応フローや感染発覚時の対処方法はあまり見当たらないため、これらを盛り込んだ」と遠藤さん。「商店街は各店舗のゆるやかな集合体。そのため、ガイドラインを強制することはできないが、有事の際の備えになる」とも。
11月30日に発行し、500部を印刷。同商店街の会員・非会員合わせて約400店に配布したほか、簡易版のリーフレットを用意した。公式サイトにはダウンロード版の申し込みフォームを設け、希望があれば簡単な審査を経て無料配布する。
「年明けに緊急事態宣言の話が出てから、取材の申し込みやダウンロード版の利用申請がぐっと増えた」と遠藤さん。現在のダウンロード数は約100件。「利用希望者の職種は様々で、需要の高まりを感じる。医療機関からの利用希望もあった」という。
緊急事態宣言を受けて、遠藤さんは「店を閉める場合、休業中にやっておくべきことなど、今後に役立つ情報発信の拡充も考えている。まずは感染予防や感染時にとるべき対応の周知に努めたい」と話す。