展覧会「『ガリヴァー旅行記』300年 ガリヴァーと奇想天外!ワンダーランド-18世紀イギリスのはじける好奇心(キュリオシティ)」が6月1日、「慶応義塾ミュージアム・コモンズ(通称=KeMCo、ケムコ)」(港区三田2、TEL 03-5427-2021)で始まる。主催は同施設。
「Gulliver’s Travels, Jonathan Swift, 1726」(個人蔵、写真提供=慶応義塾ミュージアム・コモンズ)
ケムコは慶応義塾大学が所有する文化財を収蔵、管理、展示する大学ミュージアム。文化財を起点に、大学と関わるあらゆるコミュニティーと交流する場づくりを行う。
今回の展示テーマ「ガリヴァー旅行記」は、1726年にアイルランド出身の作家ジョナサン・スウィフトがロンドンで出版した作品。同展担当者の本間友さんは「日本では子ども向けとして一般に普及しているが、出版当初から幅広い世代に親しまれた物語。社会風刺が辛辣(しんらつ)で、出版社が本文を勝手に修正したほどの挑戦的な書物だった」と話す。同書を長年研究している慶応義塾大学文学部の原田範行教授の発案・企画で、同書の出版300年を記念して開催に至ったという。
展示作品は初版本を含む約90点。会場の「Room1」では、作品をセクションに分けて展示する。セクションは、初版本などを展示する「ガリヴァー、登場!」、初版本が出版された当時の英国社会の様相を伝える「諷刺(ふうし)と物語と――『ガリヴァー旅行記』の着想源」、同書の縮尺の変化、視覚的言語表現、印刷表現に着目した「視点を変える、遊んでみる」、日本との関わりを資料から探る「『ガリヴァー旅行記』と日本」の4つ。「Room2」では、著者と同年代を生きた画家ウィリアム・ホガースの風刺画を展示する。
同展覧会の特徴は「日本が『ガリヴァー旅行記』の成立に何らかの形で関与していたのではないか、という視点を導入することにある」と本間さん。第3部の最終章で日本が登場するほか、作品全体で日本への言及が散見されるという。背景には、徳川家康の書簡や、徳川綱吉に謁見したドイツ人医師の記録などが当時の欧州に実在したほか、著者の師が日本と交易する駐オランダ大使を務めた人物だったことが挙げられる。
本間さんは「日本では、江戸時代に作られた『奈良絵本』に小人国や巨人国、空飛ぶ島を思わせる図像が描かれたことから、同書が日本に影響を与えたという切り口で語られることが多かった。しかし、日本側が逆に影響を与えていたのではという考え方もあり、本展ではそれを紹介している」と説明する。
7月10日には、原田教授らによる講演会を開催する。6月17日と7月15日には、原田教授によるギャラリートークを開く。どちらも無料で、事前予約制。このほか、展覧会カタログ(1,500円)を同施設4階オフィスで販売する。
本間さんは「『ガリヴァー旅行記』は、近代国家と近代科学が形成され始める黎明(れいめい)期に、国家をどうつくるか、科学の知見を社会にどう実装するかという問いを込めた風刺文学の傑作。同書をこれほどまでに徹底解剖した展覧会はそうそうないので、来てもらえたら」とほほ笑む。
開催時間は11時~18時。土曜、日曜、祝日休館。6月13日、7月11日は特別開館。6月15日、7月13日は臨時休館。入場無料。7月30日まで。