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五反田ヒルズのスナック「BOSS」が抱える、アフターコロナの期待と不安

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提供:BOSS|文:矢内 あや|編集:ノオト

東京都は10月25日、飲食店に要請していた営業時間短縮を解除しました。その後、新規感染者数も1桁台まで下がり、いままで要請に従っていた飲食店は、少しずつコロナ禍前の日常を取り戻し始めています。

新型コロナウイルス感染症の拡大で、長い間苦境に立たされた飲食店。なかでも、お酒の提供と対面での接客がメインのスナックは、コロナ禍でどういう状況になって、この先どのようにしていこうと考えているのでしょうか。

今年9月に開業6年を迎えた通称・五反田ヒルズのスナック「BOSS(ボス)」も、感染症の流行によって2020年春以降はまともに営業できなかったそうです。チーママたちを雇い、店を切り盛りする綾乃ママから声をかけられ、アフターコロナの期待と不安、これからのスナック経営について話を聞いてみました。

先の見えない不安が募り、スナックをやめることも考えた

「まさか、ここまでコロナ禍が長引くと思っていなかった」

そう語るのは五反田駅から徒歩2分、通称・五反田ヒルズに店を構えるスナック「BOSS」の綾乃ママ。常連客やスタッフからは、“ボス”の愛称で親しまれています。

「一番焦ったのは、今年の夏。日ごとにどんどん感染者数が増えて、これからどうなっていくのかなと不安でいっぱいになっちゃって。7月からお店を休業していたから、家族以外の誰とも会っていなかったの。だからついつい休むことに慣れてきて、仕事に対するちょっとやりたくない気持ちも出てきちゃって。『このままだと私ダメになる……』と思ったんだよね」

今年の春、コロナ禍も気づけば2年目に突入。飲食店にとっては先の見えない日々が続き、感染者の激増とともに東京オリンピックが幕を閉じました。綾乃ママは、いつになったら普通に営業できるのか不安でポキンと心が折れてしまい、店を閉じようかと考えた時期もあったそうです。

「でも落ちるところまで落ち込んだら、あとは這い上がるしかないんだよね。そういう性格だから。それで9月ごろからは、少しずつ気持ちを切り替えていったの。お客さんの会社に差し入れやお花を届けに行ったり、単身の人におかずを作ってお裾分けを渡したり。とにかく人と接点を持つようにしてね」

3年前まで、昼間は一般企業の営業職、夜はスナックのママと、長年ダブルワークをしてきた働き者の綾乃ママ。通常の営業はできなくても、何か動いていないと落ち着かなかったと言います。

「仕事って、頑張った先に結果が出ると信じられるからこそ、楽しいものじゃない? なのに、この状況だと今後の売上がどうなるか分からなくて、常に不安がつきまとっていて。毎日お客さんとコンタクトを取るようにしたのは、その不安を『とにかく払拭していかなきゃ』と思ったから。やっぱり接客業は、そういう日々の積み重ねが大事でしょ?」

常連客からは「ボス、大丈夫ですか?」、「年内には顔を出しますからね」といった気遣いのLINEが頻繁に届き、綾乃ママにとってはこれが大きな励みとなったそうです。

通常営業が再開となった今、小さなお店はここからが勝負

営業時間を短縮して感染拡大防止に協力した東京都の飲食店には、協力金が支給されます。「2019年と比較したら、店の売上は5分の1になっていた」と話す綾乃ママ。小さなお店は協力金のおかげでなんとかやってこられたと振り返ります。

「でも、自分含めて、売り上げに対する危機感が緩んでしまったお店も少なくないはず。協力金の給付がなくなった今、ここからが本当の勝負になりそうって考えているんだけどね」

はたしてコロナ禍前のように、お客さんの賑わいはもとに戻るのだろうか……。先の売上が心配だと不安を漏らす中、綾乃ママはある決断をしました。それは、フリーのお客さんをしばらくお断りすること。綾乃ママのポリシーとして、今まで支えてくれた常連さんを大事にしていきたいという思いが強くあります。お客さんとの距離が近いスナックだからこそ、リスクを最小限にとどめ、安心感を持って利用してほしい。そのためには、必要な決断でした。

それでも、綾乃ママに葛藤は残ります。

「大きなお店はフリーのお客さんを入れないとやっていけないから、店主それぞれが方針を考えていけばいいと思う。私は今まで支えてくれたお客さんを大事にしていく方向に舵を切ったけど……このままだと売り上げ自体はどんどん下がってしまうから、もちろん不安なんだけどね」

実際に常連客の中には、来年の転勤予定を控えている人、子どもができて足先が遠のいた人がいるなど、それぞれの環境に変化は訪れます。

「いつまでも常連さんだけに頼っていたらダメ。どんな仕事でも、常連さんを大事にしつつも、やっぱり新規のお客さんを増やしていかないといけないでしょう? だから最近は、空いている時間帯なら初めての人も来店OKにしているの」

お客さんの健康を守るのはもちろん、従業員にも安心して働いてほしい

一般的に、スナックは酒類の提供や来店客とのお喋り、カラオケがメインとなる業態です。そのため、コロナ禍での通常営業が難しいことはもちろん、居酒屋に比べて感染症対策も立てづらい傾向にあります。

「BOSS」は来店客との会話を楽しみたいという意向から、あえてカラオケを置いていません。カラオケのないスナックとして、お客さんとの繋がりをどう再構築していくかを綾乃ママは常に考えています。

「私含め、働いている子は全員マスクをしているし、お客さんも飲むとき以外はマスクをつけて過ごしてくれる方が多いのはありがたいよね。入口のドアは開けっ放しで、奥の窓も常に開いているから、空気の循環はとてもいいしさ。体調が悪そうなお客さんがいたら、遠慮せず『今日は帰りなさい』とバシッと言っちゃう。お客さんとの今までの信頼関係があるから、そういうのはあっけらかんと言えるんだよね(笑)」

ほかにも、検温と手指の消毒が同時にできる機械を入り口に設置したり、エアコンを性能のいいものに買い替えたりしました。綾乃ママが付き合いのある飲食店は、営業再開前にむけて感染症対策として設備投資した個人店が多いそうです。戻ってきてくれたお客さんに、心地よく安心して店内で過ごしてもらえるよう、飲食店のみなさんはどこも試行錯誤しています。

「お店を6年間支えてくれた常連さんが大事なのはもちろんだけれど、従業員の子たちにも安心して働ける環境を作ってあげたい。やっぱりお酒の提供があるからこそ、感染対策が緩いお店で働きたくないと思う子もいるだろうし。なるべくスタッフにも寄り添いわないとね」

個性的な飲食店が並ぶ五反田ヒルズの中でも、のんびりとした性格に定評がある綾乃ママ。五反田の飲食店は横の繋がりが強いので、他の店舗とも感染症対策について相談したりアドバイスしたりすることもあるそうです。従業員、近隣の飲食店と足並みをそろえていくことで、街全体を盛り上げ、コロナ禍を乗り切ろうとしています。

人と触れ合えるスナックを絶やさないよう、前に進んでいくしかない

いざ通常営業を再開するにあたって、綾乃ママは「ワクワク」と「不安」が入り混じった複雑な気持ちを抱えていると話します。それでも、待っているだけではダメ。前に進んでいくしかない。そんな吹っ切れたような気持ちを強く感じました。

「落ち込むこともいろいろあったけれど、辛いのは自分だけじゃない。飲食店はきっとみんな不安よね。でも全てを諦めたら、店が潰れるのを待つだけになっちゃうから。世界中みんな状況は同じ。もうそうやって捉えるしかないね。『コロナのせいでお客さんが来ない』という考え方だけは絶対にしたくないの。この状況でどうすればお客さんが来やすくなるのか、工夫していくのが経営者のやること。お客さんが安心できるサービスはどのお店も必要ね」

もし「BOSS」がダメになったら、仕事を選ばず生活のためにしっかり働くときっぱり言い切る綾乃ママ。とはいえ、できる限り人との繋がりを大事にできるスナックを続けていきたいのが本音だと言います。

「やっぱり人とのコミュニケーションはなくてはならないものじゃない。私、20代~30代のお客さんに『東京のお母さん』って呼ばれていてね。本当の子どももいないのに(笑)。上京してきた子たちからすると、少しでも寂しさを埋められる存在になれているのかな? それならうれしいけどね」

綾乃ママにとっては、毎年家に置いてあるカレンダーにお客さん一人ひとりの誕生日を記入していくのが恒例行事です。

「カレンダーを確認して、『来週誕生日だね』とか、『もしよかったらプレゼント用意しておくから来てね』とお客さんに声を掛けるの。人ってそういうところを求めている節が、どこかにあるんじゃないかなと思うから。『いいよ。誕生日なんて……』と照れていても、直接お祝いされるとうれしいじゃない? 私もそうだもん。だからそういうお祝い事は大切にしたいよね」

コロナ禍で人の繋がりが希薄になってしまい、お客さんも人恋しい状態が続いています。リアルなコミュニケーションこそ癒しになったり、ストレス緩和になったりすることもあるでしょう。「ちょっと一杯行こうよ」と友人を誘って飲食店でご飯を食べたり、飲んだりする時間がいかに大切なのか、このコロナ禍で私たちはより気付かされたように思います。

「悩みを気軽に話せなくて辛い気持ちを抱えている人も多いと思うけれど、人とご飯を食べながら話しているだけでだんだん元気になってくることもあるでしょ? お酒なんてまさしくその潤滑油だと思うの。人と笑いながら話していたら『明日からまた頑張ろう』と思えるしね」

「こういうお店がお客さんに求められる限り、続けていきたいよね。外に出て、人とコミュニケーションを取るのはどんな時代でも必要だと思うし、人と関わらないと閉鎖的になってしまう……。だから、うち以外でも感染症対策をきちんとしているお店には、よかったら顔を出してほしいなと思っています」

INFORMATION

BOSSでは12月22日(水)と24日(金)、クリスマスと忘年会を兼ねた特別営業を予定しています。常連さんに感謝の意を込めて、当日は飲み放題(1時間=3,000円、ワンプレートのフード付き)に。馴染みのお客さんになると、LINEで案内が届きます。

BOSS

住所:品川区西五反田1-9-3 リバーライトビル1階
営業時間:19時~24時
定休日:年内は木曜・土曜・日曜定休

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